1990年台の後半から2000年台の前半にかけて「貯蓄から投資へ」という事を言う人が増えました。簡単に言うと、庶民も株や債券などのリスク商品を買おうという運動です。
最近はそれほど聞かなくなりましたが、それでも全体的には、「貯蓄から投資へ」という流れは変わっていないでしょう。例えば、投資信託を買う人は、以前と比べると、かなり多いはずです。iDeCo やNISA を使ってリスク商品の運用をしている人もいます。
でも、「貯蓄から投資へ」という考え方は、鵜呑みにしてしまって良いのでしょうか。率直にいって、庶民には、「先ず貯蓄こそ大事」という気がしないでもありません。
Contents
「貯蓄から投資へ」の流れは止まらない
バブル崩壊以降、「貯蓄から投資へ」ということをいう人が増えました。金利の低い銀行預金ではなく、リスクを取って投資をしようという考え方です。
正確に言うと、バブル崩壊以降というよりは、金融ビッグバンの頃からでしょうかね。例えば、庶民でも株式が買いやすく成り、投資信託というリスク商品も一般的に成りました。
この「貯蓄から投資へ」という流れでは、具体的には、預金をやめて次のような金融商品への投資をすすめる事が多いようです。
- 株式
- 投資信託
- 変額年金保険
- 外貨預金
実際に、投資に興味を持っている人なら、これらの金融商品のうちの一つくらいは持っているかもしれませんね。もちろん、これ以外にも、色々な金融商品が勧められています。
こういった金融商品を買うこと自体は、多くの場合は悪いことではありません。いや、一部、明らかに不利な商品も有る(後述します)のですけどね。正しく選べば、マトモなものを買えるでしょう。
「貯蓄から投資へ」は本当に良いことか?
投資商品に良いものが含まれているからと言って、「貯蓄から投資へ」というスローガンに全く疑問がないわけでもありません。「貯蓄から投資へ」というのは、庶民にとっても本当に必要なものなのかという疑問を持っているのです。
このページでは「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズが本当に正しいのか考えてみましょう。まあ、ページのタイトルから、私がこの考え方に疑問を持っているのは分かってしまうと思いますが。
富豪が投資をするメリットは簡単に見つかるが
さて、「貯蓄から投資へ」といった時の「投資」とはいったい何を表すのでしょうか。
上にも書きましたが、この言葉は、「バブル崩壊後金利が下がったので投資をしよう」というような文脈の中で使われます。そうであるのなら、この場合の「投資」は、運用をしてお金を増やす事を意味するのでしょう。
となると、ここで一つの疑問が出てきます。庶民の場合、資産運用をする事でどの程度お金を増やせるのでしょうか?
金持ちだったら運用は意味がある
例えば、10億円の資産を持っている、お金持ちがいるとします。この人は1年に1万円増やすだけで、毎年1000万円入ってくることになります。
必要以上に贅沢な暮らしをするのでなければ、これだけあれば十分に暮らせますよね。つまり、運用して増やすのは、非常に大事なことなのです。
庶民が1%増やしても、大した意味はない
しかし、100万円しか持っていない庶民だとどうでしょうか。年に1%増やしたところで、1年に1万円にしかなりません。
ちょっと贅沢な食事をしたら、それでおしまいです。これって、リスクを取ってまでやることでしょうか。
こんなことに時間を使うくらいなら、貯金でも頑張ったほうが良いでしょう。
目一杯リスクを取っても年に「6%+インフレ率」程度
私たちが資産運用しようと思ったときに、具体的にどの程度増やす事ができるのでしょうか。運用する資産が少ないと、上に書いたように、年1%程度では焼け石に水ですよね。
全額株式で運用して6%程度
庶民が購入可能な金融商品を考えると、かなりリスクを取っても年平均6%程度増やすのが限界のように思えます。正確に言うと、「6%+インフレ率」ですね。
6%と言う数字がどこから来るかというと、株式投資の期待収益率から来ています。年金基金やらGPIF やらが公表している期待収益率を見ると、このあたりが妥当のようなのです。
ちなみに、期待収益率というのは、1年後にどのくらい金融資産の価値が増えている事が期待されるかをあらわす数字だと思ってください。期待収益率が6%だったら、平均的な結果なら、6%程度は資産価値が増えていると言う事です。
つまり、年金基金やGPIF は、株式に投資すると1年で6%くらいは増えると思っているわけです。正確に言うと、GPIF はもうちょっと低い予想かな。
まあ、株式投資には変動リスクがあるので、実際はどうなるかわかりませんけどね。
仮に1,000万円投資したとすると
年6%という言い方だと感覚的にわかりにくいところもあります。そこで、実際の金額で考えてみましょう。
ある家庭では1,000万円を金融資産に投資しているとします。2人以上世帯の金融資産の中央値が420万程度なので、普通の家庭よりは金融資産を持っている家庭です。
この家庭では強気の運用をしています。全てを個別の株式と株式に投資する投資信託に投資しているとしましょう。
期待収益率が6%とすると、1年後には60万円増やせている事になります。つまり、投資資金が1,000万円あって、かなりリスクを取っても60万円程度しか増やせないという事ですね。
繰り返しますが、1,000万円あって、しかもかなり無理をしたのに、たったの60万円です。
かなり無理をしたというのは、年によっては持っている資産の何割も資産が減ることがあるという意味です。ちゃんと分散していれば、1年に3割以上減る確率は2%程度でしょうけどね。
60万円増やすなら貯蓄の方が簡単
年間60万円貯めるのは、一般の家庭でも難しくないでしょう。月々5万円貯蓄すれば、1年後には60万円貯まっていますからね。
ボーナス時にまとめて貯蓄できるのなら、月々の貯蓄はさらに少なくて済むでしょう。まあ、普通の収入があれば、十分に貯められる額ということです。
この2つを比べるとわかるように、庶民の場合は増やす事を考えるよりも貯める事を考えた方が良さそうです。貯蓄の方が確実ですし、それ程難しいことではありませんから。
貯蓄の習慣を作れるかどうかだけの問題です。人によっては、それが難しいことも有るようなのですが。
すくなくとも、運用して増やす事を考えるよりも得策です。少なくとも、目一杯リスクを取った運用するよりは、遥かにマシです。
まず貯める事を考えよう
以上のような理由で、庶民の場合はまずどうやって貯めるかに意識を集中する事をおすすめします。投資で増やす事を考えるのは、貯蓄方針が決まった後です。
もちろん、投資で増やす事を考えるのがいけないわけではありません。効率的に増やす事ができるのなら、積極的に行なうべきです。
元手が1,000万円とは言わないまでも、数百万円程度あれば、数十万円くらいは増える可能性があるわけです。それをみすみす見逃す事も在りませんからね。
ただ、手順としては、貯蓄の方がやりやすいと言う事です。「貯蓄から投資に」というよりは「貯蓄してから投資に」というふうに考えるといいでしょう。
まとめ: 「貯蓄から投資」ではなく「貯蓄してから投資」が現実的
投資信託の積立で貯蓄と投資を両立
ところで、最近は、貯蓄をしながら投資も出来るという優れた商品があります。投資信託の積立が流行っているのです。
月々2万円と3万円という感じで銀行からお金を引き落とし、そのお金で自動的に選んだ投資信託を買っていくことが出来るわけです。こうすると、お金を貯めながら運用することも出来ます。
これの一番ありがたい点は、最初に決めておくとあとは自動的にできるという点です。めんどくさい事が嫌いな人でも、最初に申し込みをするだけで、貯蓄と投資が出来てしまうのです。
毎月一定額を削って、お金を貯めるのは、意外と大変です。しかし、自動で貯まっていくとしたら、それほどストレスなく貯めることができるでしょう。
2017年からは、投資信託の積立に有利な「つみたてNISA」も始まります。この仕組みを利用しない手はありません。
また、iDeCo も基本的には、投資信託積立ての仕組みですね。節税もできるので、これも優れた仕組みです。
ちなみに、投資信託の積立ではSBI証券を利用することをお勧めします。積立可能な投信の本数が多いうえに、顧客満足度も高いからです。
外貨預金と保険は止めておいた方が良い
最後に一つおせっかいを。
一番最初に、投資商品として、外貨預金と変額年金保険の名前を挙げました。でも、この2つに関しては、絶対に避けた方が良いです。
保険での貯蓄は手数料が高い
変額年金保険を避けた方が良いのは、手数料が高いためです。手数料が高いという事は、私たちにとって不利ということですね。
あ、変額年金保険に限らず、保険での資産運用は全般的に避けた方が良いです。
というか、金利が低い時期に養老保険や定額型の個人年金保険などの固定金利型の保険に入るのに比べたら、変額年金保険はまだマシな方と言えるでしょう。
そのくらい、保険での貯蓄はダメなのです。
外貨預金は有利でもなんでもない
外貨預金も負けず劣らずで酷い商品です。外貨預金は一見金利が高く見えるでしょうが、実は、為替の変動を考慮すると有利とは言えないのです。
しかも、日本国内の外貨預金は、現地の預金金利と比べて低めに設定されている事が多いようです。日本人は外国語が苦手だから、気づかないとでも思っているのでしょうか。
特に、メガバンクで外貨預金をするなんて、お金をドブに捨てるようなものです。メガバンクの金利の低さは、ちょっと異常なレベルなのです。まあ、メガバンクの金利が低いのは、円預金でもおなじですけど。
為替リスクを取らないといけないうえに、金利が外貨建てMMF よりも大幅に低いことが多いのです。金融機関は、顧客を完全にカモとしか思っていません。
ちなみに、外貨預金を選ぶくらいなら、外貨建てMMF を選ぶほうがはるかに良い選択でしょう。なんとなく馴染みがあるという理由だけで、外貨預金を選んではいけません。
まあ、何れにしても、この2つの商品には注意をしてください。要注意の金融商品です。
スポンサードリンク
まずは確定拠出年金(個人型)を検討しよう
個人の資産運用で一番有利な金融商品は、何と言っても確定拠出年金(個人型)でしょう。いわゆるiDeCo のことです。
普通に働いている人なら、年間数万円から数十万円の節税が可能です。もちろん、完全に合法です。こんなに有利な金融商品は、他には存在しません。加入がまだの人は、とりあえず検討だけでもしてみてはいかがでしょうか。
iDeCo をはじめるには、窓口となる金融機関を選ばないといけません。お勧めはSBI証券かマネックス証券です。とりあえずは、資料請求だけでも。

スポンサードリンク





関連した記事を読む
- 外貨預金よりも外貨建てMMFの方が資産運用には向いている
- 新聞やテレビの報道を見ていると株価は常に下がっているような気になってくる
- 金融資産500万円の家庭の株式投資
- 月々1万円2万円3万円程度の投資信託の積立だったら「つみたてNISA」がお得!
- 信託報酬が安いインデックスファンドが増えている| 長期投資を考える人には朗報です