資産運用の入門書には、「金融機関の窓口に行って相談しなさい」という趣旨のアドバイスが書かれている事があります。専門家の意見を聞いてから投資を始めなさいという話ですね。
でも、この行動って、本当に有意義なものなのでしょうか。率直に言って、害のほうが大きいと思えてなりません。
具体的に何が問題なのでしょうか。見ていくことにしましょう。
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銀行の窓口で資産運用の相談?冗談でしょ
資産運用の本を読んでいると、次のような事が書かれている事があります。
「投資の初心者は金融機関の窓口まで出向き、納得するまで話を聞きましょう。餅は餅屋と言いますから、金融商品のプロの意見に耳を傾けるべきです。」
さらには、ご丁寧に、投資経験のない人(だいたいは出版社のスタッフ)が実際に銀行の窓口に行ってアドバイスを受ける様子を、写真入りで紹介しているものすらあります。はじめての人でも大丈夫という、アピールでもしたいのでしょうか。
銀行や証券会社に言ってア相談するというのは、一見もっともらしい意見です。プロが教えるのだから、有益な情報が得られそうですよね。
でも、本当に、このアドバイスは素直に信じて良いのでしょうか。個人的には、疑わしいアドバイスだと思っています。
というのも、金融機関の営業担当者は、顧客を儲けさせるために金融商品を売っているわけではないのです。手数料収入を稼ぎ自分たちが儲けるために、金融商品を売っているわけです。
もちろん、顧客が儲かればそれに越したことはありませんが、優先順位としては下がるわけですね。極端な例だと、顧客にとって明らかに不利益な提案をすることすらあります。
金融機関が金融商品を売って得るのは、主に手数料収入です。ということは、金融機関の窓口というのは、手数料の高い商品を売らざるを得ないと言う宿命を背負っていると言えるでしょう。
つまり、顧客にとって望ましい金融商品でなく、金融機関が売りたい商品をすすめられる可能性が高いのです。実際に、そう思われても仕方がない証拠もあります。
金融機関の人件費から考えてみよう
金融機関が手数料の高い商品を売らないといけないという事実は、金融機関が窓口の担当者に支払う人件費を考える良くわかります。具体的に数字を挙げて、考えてみましょう。
仮に1人当たりの人件費を月100万円としましょう
金融機関が投資商品の相談にのる人を雇うコストを、1人につき1年で1,200万円としましょう。月100万円という想定です。
人件費が1年で1,200万円と聞くと、ちょっと高く感じるかもしれません。ただ、社会保険の企業負担分や退職金の積立などまで考慮すると、実際の給料の倍くらいのコストは掛かっています。
ですから、月100万円というのは、それ程大きく外れていない数字だと思います。
人件費を賄うだけでも1時間に5,000円の売上が必要です
さて、1ヶ月あたりの1人を雇うコストは100万円として、この人が1日10時間1ヶ月20日労働しているとします。そうすると、1時間あたりに金融機関が支払うコストは5,000円になります。
金融機関としては、当然このコストを回収しないといけません。そうでなければ、金融商品を売る意味なんてありませんからね。
1時間に2人の相談にのれると仮定し、さらに5割の確率で契約が取れると仮定しましょう。そうすると、1契約に付き5,000円の手数料を余分に取って、やっと人件費分が回収できる事になります。
人件費を回収するだけでは不十分です
もちろん、人件費分だけを回収するのでは不十分です。さらに多くの手数料をとらないと、金融機関としては利益がだせません。
例えば、金融商品を対面で販売をするには一等地に店舗を構えないといけません。家賃も馬鹿にならないでしょう。パンフレットなどを作るのも、結構なコストが掛かりますよね。
それに実際には、5割の確率で契約を取る事は難しいでしょう。こうやってコストを積み上げていくと、かなりの手数料が取れないと、金融機関としては経営が成り立たなくなります。
店舗が要らず人件費もそれ程かからないネット専業の金融機関に比べると、店舗型の金融機関というのはそうとうコストが掛かるのです。となれば、当然、利益のでやすい手数料が高い商品を売らないといけなくなるわけです。
1時間に25万円の投資信託を売り続ける必要が
仮に金融機関の取り分が、販売した金融商品の2%だとしましょう。そうすると、25万円の金融商品を売って、やっと5,000円の売上です。
つまり、金融機関の窓口のスタッフは、1時間に25万円ずつ売らないといけないことになります。このペースで売っても、自分の人件費分を稼いだに過ぎませんけどね。
でも、率直に言って、こんなペースで金融商品を売るのは、相当大変でしょう。
となると、少しでも手数料が高い商品を売るほうが効率的だという話になるのは当然です。構造的に、手数料の安い金融商品を売るのは無理なのです。
店舗を構えて金融商品を売っているという仕組みである以上、手数料が高い商品を売らざるを得ないのです。手数料が安い投資信託なんて、「売るだけ無駄」という感覚なのかもしれません。
庶民は相手にしてもらえるのだろうか
もう一つ付け加えると、少額の投資しかできない庶民は相手にしていられないというのもありそうです。
10万円とか20万円の契約なんて取っていても、大した売上には成りませんからね。1回で数百万円とか数千万円単位の契約をしたいと考えても当然です。
こんな事情があるので、金融期間の窓口に行って云々というアドバイスは、ちょっと眉唾だと感じます。
金融機関が手数料の高い商品を売りたがっている証拠
金融機関が手数料の高い商品を売りたがっている証拠は、簡単に見つけることができます。
銀行や証券会社の店頭の投資信託は手数料が高いものばかり
金融機関の店頭に行って、並べてある投資信託のパンフレットをいくつか貰ってみてください。大体が手数料が高い投信だとわかるはずです。
ちょっとでも勉強した事がある人が見ると、こんな投資信託は絶対に契約しないと思うようなものばかりです。買うだけで、投資額の2%以上が金融機関に落ちるようになっていたりね。
当然ですが、店頭に並べたパンフレットというのは、金融機関が売りたい商品です。あのパンフレットは、金融機関がお金を作って作ったものですからね。
これを見れば、彼らが手数料が高い商品を売りたいのは明らかなのです。売りたいからパンフレットをつくているわけですから。
追記:日本経済が好調でも銀行の店頭で投信を買うと損をする
さらに、銀行の店頭で投資信託を買うと、損をするという証拠がありました。2018年7月5日の朝日新聞に「銀行の投資信託、46%の個人が『損 』 金融庁問題提起」という記事が載っていました。
タイトルから分かるように、銀行で投資信託を買った人の約半分が、投資信託で損をしているわけです。こんなに損をするなら、投資信託なんて買わないほうがマシですよね。
しかもこの時期は、日本株がかなり上がった後なんですよね。普通に日本株の投資信託を買っていれば、損をするのも難しいような時期なわけです。
日本だけでなく、米国株も上がっていましたからね。特殊なものを除けば、わりと何を買っても儲けることができたと言っていいでしょう。
そんな時期ですら、約半分の人が損をしているわけです。これって、よっぽど手数料が高い投資信託を売られているとしか思えませんよね。
そうでなければ、かなり特殊な投資信託を売っているかです。なにせ、標準的な運用をしていたら、絶対に儲けられた時期ですからね。
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まずは確定拠出年金(個人型)を検討しよう
個人の資産運用で一番有利な金融商品は、何と言っても確定拠出年金(個人型)でしょう。いわゆるiDeCo のことです。
普通に働いている人なら、年間数万円から数十万円の節税が可能です。もちろん、完全に合法です。こんなに有利な金融商品は、他には存在しません。加入がまだの人は、とりあえず検討だけでもしてみてはいかがでしょうか。
iDeCo をはじめるには、窓口となる金融機関を選ばないといけません。お勧めはSBI証券かマネックス証券です。とりあえずは、資料請求だけでも。

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