先日、新発の10年物国債の取引が成立しなかったということがあるそうです。一部ではこの件で騒いでいる人もいます。
具体的に何が問題なのでしょうか。あるいは、そもそも問題はあるのでしょうか。専門家の見解をチェックしてみましょう。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト曰く
まず、このことを問題視している人のコメントから。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストという方のコメントを引用してみましょう。
日銀の『異次元緩和』で市場の流動性が非常に低くなっているうえ、金利が低く抑えられ、機関投資家にとって投資のメリットも少なくなっている。市場にゆがみが生じており、日銀の大規模緩和の弊害といえる1
いくつかポイントがあるので、一つ一つばらして考えてみましょう。
- 日銀の『異次元緩和』で市場の流動性が非常に低くなっている
流動性が低くなっているというのは、市場に出回っている国債が減っているために、売買がしにくくなっているということです。そして、市場に出回る国債が減っているのは、日銀が買っているからという理屈です。
また、流動性が低くなると、極端な値動きをしやすくなるのもデメリットとして挙げられそうです。まあ、これは、理屈としては分からなくもありません。
でも、日銀が買い占めているわけでもないですからね。ちょっと大げさな感じはします。
- 金利が低く抑えられ、機関投資家にとって投資のメリットも少なくなっている
これに関しては「だから何?」という感想しか持ちません。機関投資家にとってメリットが小さければ、投資しなければ良いんですよね。
機関投資家が投資できる金融商品は他にもあります。国債が駄目なら、別の商品に投資すれば良いでしょう。
そもそも、他国の機関投資家は、自国の国債ばかりを買っているわけではありませんよね。
- 市場にゆがみが生じ
市場のゆがみに関しては、今に始まった話ではありません。アベノミクスに関して言うと、金利を低く安定させるのは当初から目指していたことです。意図的に低金利のままで維持し、貸し出しを増やしたいというのがコンセプトの一つですからね。
ですから、問題点というよりは、金融政策が上手くいっているという話でしか無いはずです。ゆがみがまずいなら、何が実例がほしいですね。
機関投資家にとって都合が悪いという話
このように検証してみると、この方が言っているのは、機関投資家には都合が悪いという話のように思えます。「債券価格が暴落し…」みたいな話ではないようです。
というか、そもそもアベノミクス的な手法がお嫌いだったのでしょうね。そのことを言っているだけに過ぎないように思うのです。
もしかしたら記事に書かれていないだけで、具体的な大きな問題を予想しているのかもしれないですけどね。具体的には、「金利が動きやすくなって国債が暴落し…」見たいなシナリオが見えているのかもしれません。
ただ少なくとも、記事から判断できるのはこんな感じです。
他の国債は普通に取引されたようですよ
ちなみに、国債暴落というシナリオに対しては、次のような反論がされています。2
3カ月から40年債まで9種類の国債の数値が掲示されているが、14日はこのうち、3カ月と6カ月、1年、10年債が空白で、2年、5年、20年、30年、40年債には最終出来値の数字が入っている。10年債の取引はたまたまなかったが、その他の年限の国債の取引はあったというわけだ。
殊更に10年物の国債だけを指摘するのは異状だと言う指摘です。確かに、上の毎日新聞の記事を読むと、長期国債には10年物しかないような錯覚を覚えますよね。
同じ記事からもう一つ。
新発10年国債の取引が不成立ということは、日本相互証券を仲介とする10年債の取引がなかったことを意味する。だが、日本相互証券がすべての債券取引を網羅しているわけでなく、相対取引のものも多数あるので、10年債取引が一切なかったというわけではない。
取引が無かったのは、日本相互証券というところが仲介する取引に限られるということです。相対取引などは当然あるはずだろうという指摘ですね。相対取引というのは、取引所を介さない一対一の取引の事です。
取引所の取引だけを見て大騒ぎをするのは、木を見て森を見ずだと言いたいのでしょう。
以上のように見てくると、一部のエコノミストやディーラーがポジショントークとして話しているだけという感じがしてきます。とりあえず、大騒ぎするような話ではないのかなあという印象を持ちました。
- <新発10年物国債>取引が不成立 13年4カ月ぶり(毎日新聞)2014年4月14日 [↩]
- 10年物国債の取引不成立で騒ぐ債券村の住人とマスコミ(www.zakzak.co.jp)2014.04.19 [↩]
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