物価に関する指標と言うと消費者物価指数を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、もう一つGDPデフレーターという重要な指標もあります。
GDPデフレーターというのは、名目GDPを実質GDPで割たものです。
GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP
ただ、上の数字に100を書けたものをGDPデフレーターとしているものもあります。パーセント表示したいようなケースですね。
一般的には経済はインフレになるものですから、名目GDPは実質GDPよりも大きくなります。ですからGDPデフレーターは、1よりも大きくなるはずです(100をかけて定義しているものなら100より大きくなります)。しかしデフレになると、名目GDPが実質GDPよりも小さくなるので、1を割り込みます。
消費者物価指数とGDPデフレーターの違いは何だろう?
消費者物価指数もGDPデフレーターも、どちらも物価に関する指標です。ではその違いは何なのでしょうか。
総務省のQ&A のページに解説があったので、引用してみましょう。ちょっと長いですけど。
G-8 消費者物価指数とGDPデフレーター(内閣府)が乖離していると聞きますが、それはなぜですか。
消費者物価指数とGDPデフレーターの最近の動きを比較すると、GDPデフレーターの方が下落幅が大きくなっています。この乖離については、対象の違いによる要因が大きく、他に算式の違いなどの要因も考えられます。
(1)対象の違い
消費者物価指数は家計消費に対象を限定している一方で、GDPデフレーターは家計消費の他に設備投資なども対象となっています。設備投資は品質向上が著しいIT関連財の比率が高いことから、これらの下落による影響が大きくなります。このため、GDPデフレーターの変化率の方が、CPIの変化率より低くなっています。
また、石油製品などの輸入品価格が上昇している中では、消費者物価指数はその分上昇するのに対し、GDPデフレーターでは製品価格に全て転嫁されない限り、下落に働くため、両者の乖離幅は大きくなります。
なお、両指数をできるだけ同じ対象範囲にして比較するため、消費者物価指数の総合とGDPデフレーターを家計最終消費支出に限定した指数の間で動きを比較すると、両者はほぼ同じ動きをしています。(2)算式の違い
消費者物価指数はラスパイレス算式、GDPデフレーターはパーシェ算式を採用しています。一般に比較時点の数量ウエイトで加重平均するパーシェ算式は指数が低く、基準時点の数量ウエイトで加重平均するラスパイレス算式は指数が高くなる傾向があります。また、品質向上は数量の増加とみなされるので、パー シェ算式の場合、品質向上で下落した品目のウエイトは拡大します。このため、パーシェ算式を用いているGDPデフレーターは下落率が大きくなります。
なお、GDPデフレーターはできるだけ指数算出に伴うバイアスを軽減することができるようにウエイトを毎年更新する連鎖方式により作成されています。消費者物価指数についても参考系列として連鎖方式による指数を作成・公表しています。
算式の部分はこれだけだと評価のしようがありませんね。ただ、「対象の差」に関しては非常にわかりやすいです。
要するに、調査の対象が違うのでGDPデフレーターと消費者物価指数は乖離するわけですね。これは当たり前の話です。
消費者物価指数は、その名前の通り、消費者の物価を対象に計算したものであるわけです。その一方でGDPデフレーターは企業の設備投資なども計算に入ってくるわけです。
どうやって使い分ける?
こういった違いはありますが、消費者物価指数とGDPデフレーターは良く似た指標です。似たような指標が2つあると、どちらを使えば良いか困ってしまいますよね。
実際、経済のプロを自称する人も、自分の都合に合わせてこの2つの指標を使い分けているふしがあります。
消費者物価指数との差はどのくらい?
物価を表す指標といえば、最もよく使われるのが、消費者物価指数でしょう。消費者物価指数というのは、「消費者が購入する商品やサービス価格を総合した物価指数(知恵蔵)」です。
率直に言って、この2つは似た指標です。消費者物価指数のほうが、消費者が購入するモノの物価に特化した指標なので、より限定的なものではありますけどね。
さて、この消費者物価指数とGDPデフレータは、どの程度の差があるものでしょうか。どちらも物価を表す指標だから、近い数字が出るはずです。でも、考え方がかなり違いますから、差があっても不思議ではありません。
ということで、2008年の水準を100として、消費者物価指数とGDPデフレータを比較してみました。次の図です。

なお、参考までに、アメリカの消費者物価指数も入れておきました。また、数字は、世界経済のネタ帳から拾っています。元々のデータは、”IMF – World Economic Outlook Databases” とういことです。
この図を見ると分かりますが、やっぱりGDPデフレータと消費者物価指数には、多少の差は有るようです。片方が上昇したときに、片方が下落するということも有るようですね。
GDPデフレータのほうが、若干動きが大きく出るようにも見えます。たかがか10年間の比較なので、この傾向が常に見られるかどうかは分かりませんが。
まあ、びっくりするほど大きな差ではありませんから、全体的な傾向を掴むだけなら、どちらを使っても大丈夫でしょう。ただ、精緻な議論が必要な場合は、どちらを使うかは、意外と重要そうです。
余談ですが、アメリカの消費者物価指数と比較すると、日本の物価上昇が鈍いのも分かりますね。日本の場合は、リーマンショックで下落した分をようやく回復できたというレベルです。
アベノミクスは、基本的にはうまく行っていると評価しますが、大成功と言い切れない要因の一つがこの物価に関する部分です。
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