投資信託の入門書を見ていると、「過去の実績を調べて有能なファンドマネージャーを見つけよう」などと書いてあることがあります。運用が上手い人に任せましょうというアドバイスです。
確かに、本当に有能な人が見つかるのなら、投資信託は有利な金融商品だということになります。運用が上手い人があなたに代わって運用してくれるわけですから、当然ですよね。よく宣伝文句にある「投資のプロがあなたのために運用」という状態ですよ。
でも、本当にそんなことが出来るのでしょうか?どうも、そんなことは不可能では無いかという気もしないではありません。
Contents
もっともらしく聞こえる「上手いファンドマネージャーを見つけろ」という教え
投資信託の入門書を読んでいると、よく見かける決まり文句というのがいくつかあります。その一つが、「優秀なファンドマネージャーを見つけましょう」です。
例えば、「1万円からはじめる投資の本」という本の中には、次のような記述がありました。
とにかく、「優秀なファンドマネージャーが運用している商品」を選ぶことが大切なのです。1
そしてその後、過去の運用成績を見てファンドマネージャーを評価しましょう、という感じで続いていきます。2
でも、過去のデータを見ただけで、優秀なファンドマネージャーを見分ける事なんて本当に出来るのでしょうか?本当にそんなことが可能なら、だれも退屈なインデックスファンドなんかには投資しませんよね。
本当に上手い運用ができるのなら、多少手数料が高くても、その人に任せたほうが良い可能性も大きいでしょう。でも、現実には、インデックスファンドとかETF の方が人気なんですよね。
現状を考えると、このアドバイスはちょっと微妙です。
有能なファンドマネージャーを見つけるのは難しい
専門家の意見によると、過去の実績から優秀なファンドマネージャーを見つけるのは難しい事のようです。例えば、山崎元氏は次のように書いています。
そもそも、良いファンドマネジャーというものを事前に選ぶことはできないのだ。平均よりも稼いでくれる優秀な実績のあるファンドマネジャーを、過去のデータから選ぶことはできる。しかし、過去のデータと将来のパフォーマンスに関係があるかというと、関係はない。3
運用実績が良かったグループは将来も成績がいい?
ちょっと分かりづらいと思うので、簡単に補足しましょう。
過去数年で運用成績が良かったファンドをピックアップします。そして、これらのファンドが次の年も運用成績が良いかを調べてみるのです。
この調査の結果、これまで運用成績が良かった人たちの運用成績は、全体の運用成績と比べて特に優れているというわけではないようです。少なくとも、この人達を選ぶのが明らかに有利とは言えないという言い方が妥当でしょうか。
これまでの実績は実力なのか運なのかは判断ができない
実際、マーケット平均に勝ち続けられているファンドマネージャーというのはごく一部しかいません。そして、その勝ち続けている人も、実力があるからなのか運がよかっただけなのかは客観的には判断できません。
それに、上の記事の中でも書いてありましたが、本当にマーケットの将来が予想できるのなら、人の金なんて運用しないでしょう。自分で簡単に儲けられるのですから。
こうやって考えてみると、どうしても、懐疑的にならざるを得ないですよね。
投資信託とはちょっと違いますが、次のような例が見つかりました
ファンドマネージャーの能力に関して、面白いデータを見つけました。
ヘッジファンドのデータなので、投資信託とはちょっと違うかもしれません。それでも、マーケットを理解し勝ち続けられる人がいるのかどうか、疑わせるデータだとは思います。
このデータはヘッジファンドのマネージャーを調査したものです。最初の年に上位25%に入った人で、翌年以降も上位25%に入り続けた人がどの程度いるのか調べています。
1998年:ヘッジファンドのマネージャーの上位25%に入る人は、201人
1999年:1998年の201人のうち、その次の年も上位25%に入った人は85人
2000年:上の85人のうち、上位25%に入り続けた人は14人
2001年:上の14人のうち、上位25%に入り続けた人は2人
つまり、上位25%に4年連続で入り続けた人は、201人中2人しかいないのです。実はこの結果は、ファンドマネージャーの能力が全く同じと考えた場合と近いものです。
すなわち、ファンドマネージャーの能力が等しいとすると、連続で25%以内に入る数は次のように減っていきます。
201 → 50.3人 → 12.6人 → 3.1人
こうやって見ると、ファンドマネージャーに能力差があるのかどうかすら怪しくなります。もちろん、新設のファンドがあったり、なくなっていくファンドがあったりするので、言い切ることは出来ないですけどね。
どう考えるかはあなた次第ですけど
優秀なファンドマネージャーを見つけられると思えば、それを探してみるのも悪くはないかもしれません。ただここまで説明したように、個人的には見つかる可能性が低いような気がしています。
そもそも、そんな人がいるのかどうかすらわかりません。
ですから私達のような個人投資家には、保守的な投資がいいのではないかと思っています。すなわち、分散投資をしてリスクを減らしながら、インデックスファンドで市場平均のリターンを目指すという方法です。
手間をかけても探す価値が有ると思う人は、がんばって探してみてください。そんなに手間をかけられないという人は、インデックスファンドが合理的だと思います。
2019年2月追記:世の中の趨勢は、インデックスファンドと呼ばれる日経平均やTOPIX に連動するファンドが主流になりつつ有るようです。これにはETF も含みます。これは、投資信託の純資産総額のランキングを見ると一目瞭然です。
このページを最初に書いた頃は、人気の投資信託といえば、いわゆるアクティブファンドと呼ばれている投資信託でした。「グロソブ」と呼ばれた投資信託(正確には「グローバル・ソブリン・オープン」)などが人気を集めていましたね。
しかし現在では、投資信託ん純資産総額のランキングの上位に、アクティブファンドは入っていません。完全に、ETF というインデックスファンドの一種が、人気の投資信託となっているのです。
運用の上手い人を見つけるのは難しいという認識が、広がっているのかもしれませんね。
この事実は、知っておいても良いのかもしれません。というのも、銀行などは、手数料が高いアクティブファンドを売りたがるようですから。注意が必要です。
- ■ 1万円からはじめる投資の本―ビギナーのための超わかりやすい入門書
[↩]
- 一言断っておきますが、上の引用はGoogle のブック検索でたまたまでてきたので引用させえてもらっただけです。
本の詳しい内容は読んでいないので、この本の他の部分は否定も肯定もしません。 [↩] - ■ 「日本版国家ファンド」に断固として反対する [↩]
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タグ: ファンドマネージャー





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