2018年1月から始まる「つみたてNISA」という仕組みは、要するに、投資信託の積立を促進する仕組みです。投資信託の積立で儲けた分に対しては課税しないことで、投資を促そうという仕組みですね。
基本的な考え方はこれで良いのですが、細かく見ていくと金融庁の裏の意図が見えそうです。どういう事かというと、金融庁がお勧めする金融商品や投資方法というのが、はっきりわかるのです。
このページでは、そのあたりのことについて探ってみることにしましょう。金融庁がお勧めする投資とは、いったいどんなものなのでしょうか。
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投資信託の選定基準を見ると金融庁の意図が分かる
金融庁の考えていることは、「導入直前!『つみたてNISA』の制度説明」という資料(パワーポイントのスライド)を見ると分かります。これには、2017年9月10日と日付があり、金融庁総務企画局政策課 金融税制調整官 今井利友 という人のドキュメントみたいですね。
このドキュメントの中で、「つみたてNISA」の対象となる金融商品の選定に関する部分について説明する、「つみたてNISAの対象商品について」1 というページから引用してみましょう。
既存の投資信託は長期投資・分散投資には全然ダメ
まず、ページの上半分が既存の投信がいかに「つみたてNISA」にふさわしくないかが書かれています。
既存のすべての投資信託
- 既存の投資信託の大半は、長期の積立・分散投資による資産形成に不向き。
- -短期的な運用のもの(信託期間20年未満のものが全体の約8割)
-手数料の高いもの(販売手数料の平均2.5%)
-毎月分配型のもの(売れ筋商品の約9割)
-レバレッジをかけたもの(日経225の2~3倍の値動き)
等は、つみたてNISAの対象から除外。
一番最初に、「既存の投資信託の大半は、長期の積立・分散投資による資産形成に不向き」と断じています。これ、ちょっとすごい表現ですね。インパクトが強かったので、もう一回書いておきましょう。
「既存の投資信託の大半は、長期の積立・分散投資による資産形成に不向き」
金融庁の公式見解としては、ほとんどの投資信託は「つみたてNISA」にふさわしくないということです。手厳しいですねえ。
一応、「つみたてNISA」にはダメですよという言い方にはなっています。でも「つみたてNISA」の趣旨を考えてみると、読みようによっては、個人の資産運用(長期投資・分散投資)にふさわしい投資信託が存在しないと、金融庁に怒られているようにも読めますね。
かなり手厳しいです。金融機関がしょんぼりしちゃうような表現ですね。
個人的には完全に同意します
まあ、個人的には、金融庁の見解にかなり同意します。
今、日本国内で買える投資信託は、本数ばかり多くて長期の資産運用に使えるものは数えるほどしか存在しません。まあ、数えるほどでも存在するので、ちゃんと勉強している人は困らないのですけどね。
それでも、投資経験が浅くてちゃんと勉強していない人から見ると、著しく不親切な状況だと思うのです。金融庁にも同じように見えているようです。
投資信託を選ぶときのチェックポイントに使えそう
そして、ほとんどの投資信託がなぜダメなのかに、もう少し具体的な説明もしています。金融庁の説明を書き直すと、次のような感じですかね。
- 信託期間が短すぎて、そもそも長期運用ができない
- 手数料が高すぎて、それだけでアウト(販売手数料について指摘しているが、信託報酬も考慮しているようですね)
- 毎月分配型は、そもそもアウト
- レバレッジをかけたリスクの高い商品
いやあ、金融庁とは予想以上に気が合いそうです。基本的に、このサイトの中で指摘してきたことと同じですからね。特に、毎日分配型をアウトにしたのは、よく分かっていらっしゃる。さすがです。
とりあえず、この基準で投資信託を選べば、変な投信はかなり排除できるでしょう。投資をする際のチェックリストになりそうです。
率直に言って、金融機関は気分が悪いでしょうね。例えば、手数料が高い毎月分配型の投資信託って、金融機関が一生懸命売ってきた投資信託ですから。それを全否定されたわけです。後でまた触れますが、実施に金融機関の関係者の中には反発をしている人もいるようです。
手数料の安いインデックスファンドを積立てるのが基本
さて、ページの後半では、「つみたてNISA」の対象になる金融商品の具体的な条件が書かれています。
つみたてNISAの対象商品
一般的なインデックス投信(パッシブ運用)を基本。
例)国内外の株式・債券に分散してインデックス投資をするもの、日経225等にインデックス投資をするものアクティブ運用投信は、例外的に、継続して投資家に支持・選択され、規模が着実に拡大しているもの
のみ対象。金融庁への届出制。 販売手数料は0%。 毎年の運用管理費用にも上限(国内インデックス投信は0.5%等)を設け、低コストの商品に限定。 運用管理費用の金額は、毎年、投資家に通知。 販売会社は、提供する商品がどのような顧客に適しているか等を公表し説明。
こうした条件を満たしていれば、「つみたてNISA」の対象として認められるというわけです。これは、言い換えると、長期の分散投資をするのに優れた金融商品とも読み替えることが出来ます。
さらに細かい選定基準があります
また、このドキュメントでは書かれていませんが、投資対象はETF と投資信託だけに限られます。しかも、インデックス投信では、連動する指数が細かく決められているのです。2
具体的には、一つのインデックスだけに連動させる場合は、株式のインデックスと連動させるしかありません。REIT や債券だけの投資信託は、対象外になってしまうのです。
REIT や債券などを絡めたければ、株式のインデックスファンドと組み合わせたインデックスファンドを買わなければいけません。つまり、REIT や債券は組み込まなくても大丈夫というのが金融庁のメッセージです。
もっと言ってしまうと、バランス投資をするなら、日本株と外国株を組み合わせるだけで十分といっているようにも思えます。「色々な資産を組み合わせてポートフォリオを作りましょう」なんてアドバイスをしているFPは反発するかもしれませんね。
国内外の株式を組み合わせれば、分散投資は大体大丈夫。
最後にもう一度整理しておきましょう
ここまでチェックしたことから分かったのは、金融庁は次のような事を考えているという事です。
- ほとんどの投資信託は長期投資、分散投資に向かない
- 販売手数料が発生する投資信託には投資してはいけない
- 毎月分配型の投資信託は論外
- レバレッジがかかった投資信託は長期分散投資に向かない
- 信託報酬が十分に低くない投資信託には投資してはいけない
- 長期分散投資にはインデックスが良い
- 長期分散投資をする時には国内外の株式中心で考えるのが良い
率直に言って、これは、投資信託を選ぶうえでなかなかいい指標になるのではないでしょうか。銀行などに行くとされる、バイアスがかかったアドバイスなどと比べると、意味があるアドバイスという感じがします。
これから「つみたてNISA」を利用する人には参考になりますし、普通に長期・分散投資をする人にも参考になるでしょう。確定拠出年金での運用も、こういう方針で考えていいでしょうね。
反発している
ちなみに、こういった金融庁のスタンスに対して、反発している金融機関の関係者も少なからずいるようです。新聞などでも、反発の声が記事になっていたりしますね。
まあ、金融機関の関係者が反発するのも、分からなくはありません。今回の金融庁のスタンスだと、金融機関にはメリットがほとんどありませんから。
なぜメリットが無いかというと、手数料が削られて、たくさん加入者を増やしても売り上げにつながらないのです。愚痴りたくなるのも無理はありません。
そこで、マスコミをつかって、金融庁のやり方は投資家のメリットにならないというような批判をしています。でも、本音の部分としては、手数料の高い儲かる投信を売らせろというメッセージとしか読み取れないのですけどね。
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タグ: つみたてNISA, インデックスファンド, 金融庁





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