ZUU online と言うサイトに「投資初心者は知っておきたい『6つの投資指標』活用法」という記事がありました。参考になる部分もありそうなので、かいつまんでご紹介したいと思います。1
ちなみに、投資初心者云々というタイトルが付いていますが、全ての投資初心者に役立つわけではありません。株式投資をする人向けの記事です。ですから、投資信託を買おうという人や債券に投資をしようという人にはあまり関係の無い記事である事も、最初に書いておきます。
もう一言補足すると、ここで紹介された6つの指標は優先順位の高いものだと思います。ただ、優先順位が高い順に6つ紹介されているというわけでもありません。
まあ、どの指標の優先順位を高くするかは、人によって違う部分もありますからね。私と記事を買いたい人では、ちょっと意見が違ったということでしょう。
Contents
配当利回り
一番最初に紹介されていたのが、配当利回りでした。でも個人的には、配当利回りの優先順位はそれほど高いとは思えません。
いきなりで申し訳ありませんが、著者と意見が一致しませんでした。まあ、著者の方と意見が異なる部分があるのは不思議なことではありませんけどね。
なぜ優先順位が高いと思えないかは後述します。その前にまず、配当利回りに関しての記事の説明を引用してみましょう。
① 配当利回り…株式投資から得られる利益のうち、配当から得られる保有利回りのこと。
(計算式:配当÷株価×100)
Ex)購入株価150,000円、配当5,000円の配当利回りは5,000円÷150,000円×100=3.33%保有(途中換金なし・長期)という観点で見た場合、預金・債券より利回りが良いので満期の時期がない株式は魅力的な金融商品という一面があります。
この説明だとちょっとわかり辛いかもしれませんね。もうちょっと違った言い回しにしましょう。
配当利回りというのは、簡単に言うと、受取る配当金を預金の利息のようなものだと見立てて計算した利回りのことを言います。株式を買うと配当金と言う利息が付くというイメージで捉えるわけですね。
例えば、A社の株を100万円買うと、年に1万円の配当金が受取れるとします。こんな場合は配当利回りは1%となります。投資した100万円の1%である1万円が配当金として受取れるので、配当利回り1%と言うわけです。
まあ、考え方としては単純です。
配当利回りは重要な指標なのか?
上にもチラッと書きましたが、個人的には、この配当利回りはあまり重要では無いと思っています。
配当利回りが高い企業と言うのは、それだけ利益率が高い可能性が大きいです。なぜそう言えるかというと、配当金と言うのは利益の一部を株主に返すことだからです。一般的には、たくさん稼げるからたくさん配当が出来るという事は言えるでしょう。
利益をたくさん株主に返すということ自体は、もちろん悪いことではありません。しかしながら、配当利回りが低い企業が悪い企業かと言うと、必ずしもそうとはいえないのです。
例えば、成長性が高い企業は、利益が出ても配当を出さないことが多いです。あるいは配当をするとしても、配当金を小さくする傾向があります。
なぜそんなことをするかと言うと、利益で得たお金を配当ではなく将来の成長のために使うことを考えるからです。企業が成長すれば株価が上がります。これは株主にとって大きな利益ですよね。ですから、利益があるのに配当が小さい企業は、配当ではなく株価の上昇で株主に還元しようと考えているわけです。
逆に言うと配当利回りが大きい企業は、成長は諦めている可能性が大きいのです。確かに稼げていはいますが、これ以上の成長は望みにくいのかもしれません。
例えばマイクロソフトが急成長していた時期には、配当はしていませんでした。しかし、あるていど成長が鈍化してからは、配当を出して株主に還元しています。どちらが投資する魅力が大きいかと言うと、成長している時期のマイクロソフトでしょう。このように配当で投資を判断するのは難しいのです。
もちろん、このあたりの点まで含めて配当利回りを見ているのなら、それなりに意味はあると思いますけどね。数ある指標の中から6つに入れるかというと、ちょっと疑問かなあと思うわけです。
まあ、配当を金利に見立てているという意味では、分かり易い指標だとは思いますけどね。
配当性向
2番目に紹介されているのが、配当性向です。これに関しても、なぜ上位に入っているのか分からない指標です。あくまで私個人の意見ですけど。
記事の中では、配当成功は次のように説明されています。
② 配当性向…年間の利益からどれだけ株主に配当するかという割合のこと。
(計算式:1株配当÷1株利益×100)
Ex)1株利益200円、1株配当50円の配当性向は50円÷200円×100=25%配当性向の高い会社は株主重視、低い会社は株主軽視と捉えることができます。ただし、成長企業の配当性向は低くても良いです。さらなる企業価値向上のために利益を配当よりも投資へ回すことが株主に貢献するからです。
後半の説明にあるように、配当性向というのは企業のスタンスによって違うんですよね。成長を目指している企業なら配当性向は小さくなります。配当利回りの項でも説明しました。
ですから、「配当性向の高い会社は株主重視、低い会社は株主軽視」なんて言い方は雑すぎるのです。この記事には初心者向けのアドバイスのはずですが、このアドバイスだと初心者が誤解や混乱をするだけでしょう。
もちろん、いろいろ分かった人が分析をするのに使う程度なら、価値が無い指標だとは思わないですけどね。上位6個の中に入れるとなると、疑問に思ってしまうのです。配当利回りと並んで、私なら選外にするでしょう。
自己資本比率
3つめは自己資本比率です。やっと納得できる指標が入ってきました。
まずは、記事に書かれている自己資本比率の解説をご紹介しましょう。
③ 自己資本比率…返済不要(負債は要返済)の自己資本が総資産に占める割合のこと。
(計算式:自己資本÷総資産×100)自己資本比率が低い会社は返済が必要な負債が多いことになるので、不安定な会社経営となります。逆に、自己資本比率が高い会社は、自己資本が厚く経営体力のあることをしめし安定的な会社経営ができます。
初心者向けと言いながら、この説明もちょっとわかり辛いですね。
これもすごく簡単に言ってしまうと、自己資本比率というのは、借金が大きい会社なのかどうかを見る指標です。自己資本比率が高ければ借金が少なく、自己資本比率が低ければ借金が多いと言うわけです。
企業経営の場合は、借金があることは必ずしも悪いことではありません。ただ、自己資本比率が低すぎる企業は、投資対象から外す事も考えた方が良いかもしれません。借金が多すぎる企業は、やっぱり良くないですからね。
特に安全性に気を使って投資をする場合は、自己資本比率が大事だと言えるでしょう。自己資本比率が高い企業を選べば、倒産の確率は小さくなるからです。倒産しにくいということは、株価がゼロになる可能性をかなり小さく出来るのです。
比較するときには同業他社と比較を
ちなみに、自己資本比率を比較する場合は、同じ業種の企業ごとを比較するほうが望ましいとされています。例えば、自動車メーカーは比較的自己資本比率が低いことが多いです。なぜかというと、借金をして機器を購入しないと製造が出来ないからです。
その一方で、飲食店は自己資本比率が高いことが多いです。自動車メーカーのような高額の機器が必要ない上に、テナントも賃貸で済むからです。
ですから、トヨタ自動車の自己資本比率で判断しようと思ったら、日産自動車とか三菱自動車の自己資本比率を比べないといけないわけです。マクドナルドの自己資本比率と比べてはいけません。
PER(株価収益率)
4つ目はPER です。日本語では株価収益率と言います。
この指標に関しては、記事の中では次のように説明されています。
④ PER(株価収益率)…株価が1株利益(予想)の何倍買われているか、収益に対して割高・割安かをみる指標 (計算式:株価÷1株利益)
Ex)1株利益100円、株価2,000円のPERは2,000円÷100円=20倍一般的にはPER15倍~20倍の間を標準とし、高ければ割高・低ければ割安と判断します。実際には15倍~20倍にこだわるよりも、業種内の比較やその会社の過去の実績PERとの比較で現状の株価が割高か割安かを判断することが重要です。
当期の利益予想と株価を比べて、株価が高すぎるかどうかを比べるのがPER という指標です。例えば、一株1,000円の株の当期の予想一株利益が100円だったら、PER は10倍と言うことになります。
一般にPER が高い株式は株価が割高で、PER が低い株式は株価が割安であるとされています。利益に対して株価が高ければ割高、逆なら割安という考え方ですね。
当期の利益を予想するのは難しい
ただ、PER に関しては、難しい点があるのも事実です。というのも、当期の利益を予想するのは簡単なことでは無いからです。当期と言うのは次の決算日までの利益ということですね。
未来の事を分かる人はいないので、当期利益は状況証拠や企業の発表などを基に予想を立てるしかありません。つまりPER を使うという事は、不確定な情報から割安か割高かを推測しないといけないのです。
この他にも、PER に関しては難しい点が色々とあります。役に立つ指標ですが、本気で使いこなそうと思うと、かなりの努力が要ることでしょう。
最初は、そういう指標がある事を知っておいて、PER が高すぎたら買ってはいけない株だと言う程度の認識を持っておけば良いのでは無いかと思います。
PBR(株価純資産倍率)
5つ目はPBR という指標です。日本語では株価純資産倍率と言います。
記事の中では、次のように説明されています。
⑤ PBR(株価純資産倍率)…株価が1株純資産(その会社の解散価値をあらわし株価の理論的な下値を教えてくれる)の何倍に買われているか、資産に対して割高か割安かをみる指標 (計算式:株価÷1株純資産)
Ex)1株純資産1,500円、株価1,200円のPBRは1,200円÷1,500円=0.8倍一般的にはPBR1倍の場合が株価と企業の解散価値とが同じであることをしめし、1倍未満(株価<1株純資産)であれば割安と判断することができます。
これもちょっとわかり辛いので、別の言葉で言い換えましょう。
すごく大雑把に言ってしまうと、PBR というのは、会社を解散場合の一株あたりの理論値と株価を比較したものです。会社を解散場合の一株あたりの理論値というのが、記事の中で説明されている「1株純資産」です。
ということは、PBR が1倍を割れば、株価が会社を解散したときの理論値よりも安いことになります。逆に成長企業の場合は、PBR が10以上になるような企業もあります。
経済政策が悪い時期には1倍を切る事も
企業は成長するものだと考えられるので、常識的にはPBR は1倍を超えることが多いと考えられていました。しかし、経済成長が期待できないと思われている時期だと、1倍を切るような企業がたくさんある場合もあるようです。
例えば民主党政権時代のときのように、明らかに経済政策が上手く行っていないときには、PBR が1倍を切るような企業がゴロゴロとありました。記憶によると、0.5倍を切る企業すらあったはずです。
その時期にPBR が低い企業で財務が健全な会社の株を買っておけば、かなり確実に儲けられたでしょう。まあ、実際に買った人は少ないでしょうけどね。株を買う人が少ないから、株価が下がっていたわけですし。
ちなみに、PBR に関しては、自分で計算する必要がありません。Yahoo!ファイナンスなどに数字が載っています。
ROE(自己資本利益率)
最後に紹介するのは、ROE という指標です。日本語では自己資本利益率と言います。
記事では次のように説明されています。
⑥ ROE(自己資本利益率)…株主の持分(資本金+剰余金等)に対してどれだけの儲けを生み出したか、投資効率をみる指標。(計算式:1株利益÷1株純資産)
一般的にはROE15%前後以上であれば投資効率が良いとみることができます。尚、ROEは単年度だけで判断するものではなく、継続的な推移が重要です。継続的に高ROEを維持する会社であれば株価は堅実に上昇し、ROEが高い水準に向けて継続的に上昇する会社であれば株価が大きく値上がりする可能性が高いと言えます。
ROE と言うのは、経営者の腕が良いのかどうかを見る指標だとされています。
定義から分かるように、純資産と利益を比較した指標です。ということは、ROE を調べると純資産を使ってどれだけ利益を上げられるかが分かるわけです。腕が良い経営者ほど、与えられた経営資源を使って大きな利益を上げられると言う考え方ですね。
ROE に関しても、誰が計算しても同じ指標なので、Yahoo!ファイナンスなどで数字を拾うことができます。
最初の2つ以外は重要な指標です
最後に簡単にまとめてみましょう。
まず配当に関しては、単純に多いから良いとか少ないから悪いと言えるものではありません。ですから、上の6つの中で、最初の2つの優先順位はちょっと落ちると考えて良いでしょう。
配当に関する指標を考慮するのが悪いとは言いませんけどね。他に使える指標がありますから、そういった指標の見方を覚えた方がいいはずです。
残りの4つに関しては使いやすい指標だと思います。特に、良い企業を探すときよりも、悪い企業を候補からはじくときに使えそうです。
例えば、自己資本比率が低すぎる企業には投資すべきではありません。倒産する確率が高いからです。
あるいは、PER が高すぎる企業に投資する場合は、市場の期待が過剰でないのか冷静にチェックする必要があるでしょう。実際、過剰に期待しすぎていることに市場が気づき、株価が急落する事も珍しくありません。
また、ROE が低すぎる企業だったら、経営者の手腕を疑ってみるべきです。
一つで投資する企業が決められるような万能の指標はありません。様々な指標を複数組み合わせて、分析していくのが大事でしょう。
そのためにも、記事で上げられた6つのうちの4つはしっかり理解しておきましょう。これらの意味を知っているだけで、変な企業に手を出す確率は大きく下げられるはずです。
- 投資初心者は知っておきたい「6つの投資指標」活用法
ZUU online 2015年5月16日 [↩]
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