投資という言葉ほど、使う人によって意味が異なる単語も少ないでしょう。これだけ認識が異なっていると、議論しても全く話はかみ合わないでしょうね。
そんな例を見つけたので、一つご紹介したいと思います。「投資」という言葉に対して、様々な反応が見られて興味深いです。
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「投資」に対する反応は様々
Yahoo!ニュースに、「月17万の手取りから株・投信に6万。『ふつうの暮らし』が貯金じゃ無理…」1 という記事が載っていました。タイトルの通り、少ない給料から月々6万円を運用に回しているという男性を紹介するというものです。
率直に言って、この記事自体には、あまり面白みを感じませんでした。極端な節約をして運用資金を捻出するという人の記事は、時々見かけますからね。
ただ、それに対するコメント欄の反応が興味深かったので、ちょっとご紹介しようと思います。ちなみに、基本的にはコメントした内容をそのまま掲載するのではなく、私が書き直しています。コメントそのままだと、読みづらくて仕方がないので。
30代は資産形成に熱心?
今の40代50代より、30代の方が資産形成に熱心。なぜなら、年金や社会保障問題が言われ続ける中に育っているから国を信頼していない。
おそらく、30代の方のコメントだと思われます。でも、現状認識を誤っているように思えてなりません。
というのも、40代の人も、子供の頃から社会保険の問題を聞かされて育っているはずだからです。少子高齢化などに起因する社会保険の問題は、なにも最近始まった話ではありませんからね。
さすがに50代の人だと、ちょっと違うかな。彼らが子供の頃には、今のような少子化は、予想すらしていなかったでしょうから。
多分、若い人のコメントなのでしょうけど、思い込みが強すぎる気がします。
健康であればお金はいらない
健康面での投資が一番大事です。70歳近くまで働くので、健康でさえいれば、貯蓄がなくてもなんとかなります。
健康があればお金はなんとかなるという考え方ですね。これはちょっと、怖い考え方だと感じます。
確かに健康は大事です。これは間違いありません。
でも、健康に気をつけていても、病気になることって有るんですよね。ある程度の蓄えがない状態だと、万一病気になったときに困ってしまいます。
逆に、よく考えないで医療保険などに過剰に入る人もどうかと思いますけどね。全く備えないのもちょっと違います。
70歳まで働くから大丈夫?
また、70歳まで働いたとしても、その後の人生は10年以上あります。というのも、70歳時点の平均余命(残り何年生きるかの平均)で考えると男性でも10年以上は生きるからです。女性はさらに長生きです。
70歳で引退するにしても、蓄えが少ないと、かなり不安があると言わざるを得ないでしょう。
若いうちは投資をしてはいけない
若いうちから投資をすることに、苦言を呈する人がいます。若いうちはお金を貯めるのではなく、自分に投資しろというのです。でも、若いうちに貯蓄や投資をするのは、そんなに悪いことなのでしょうか。
昔は多かったんですよね。若いうちは貯蓄をするのではなく、自己投資をするべきだという人。
最近でも、この手のタイプは多いのでしょうか。ちょっと時代錯誤な気もしますが。
会社の倒産やら転職の可能性やらを考えると、スキルアップのための自己投資をすること自体は悪いことではありません。まあ、いわゆる資格商法には注意は必要でしょうけど。
だからといって、若い頃からの資産運用を否定することも無いでしょう。予算の範囲でバランスに気をつければ十分です。
貧乏人は働いて増やすほうが簡単
まあ、確かに、生活を切り詰めて残りを全部資産運用に回すような人を見ていると、自己投資も大事だといいたくなる気持ちもわかります。
率直に言って、資産をもっていない人の場合は、増やすよりも働いて稼ぐほうが簡単ですからね。投資は倍々ゲームなので、元手が小さいと大きく増やすことは難しいのです。
ですから、順序としては、まず稼ぎを増やしましょう。そのうえで運用を考えるのです。この順番は守ったほうがいいですよ。
いま高値だって、何で判断できるの?
今買っても高値掴みで、機関投資家の空売り餌食になるだけ。カネ余りで機関投資家の実弾の多さは、個人とは比べものにならない。
これは、いろいろと突っ込みどころがあります。そして、ある意味、勉強になるコメントだと思いました。
なぜ今が高値だと分かる?
とりあえず、今買うのが高値づかみかどうかという点から考えてみましょう。
ちなみに高値づかみというのは、高値で株などを買ってしまうことです。高値で買うわけですから、その後損をする可能性が大きいわけです。
本当に今買うのが高値づかみであれば、確かに損をする可能性が大きいでしょう。高値であることがわかっていれば、無理をして買う理由はありません。
でも、本当に今は高値なのでしょうか。なぜそうだと言えるのでしょうか。
本当にいま高値である事が分かっているのなら、実は簡単に儲けることが可能です。個人でも空売りをしてしまえばいいのです。
機関投資家でなくても空売りはできますからね。個人でもガンガン空売りをして儲ければいいのです。
高値だと分かるなら儲けるのは簡単
でも、実際には、話はそんなに簡単ではありません。実際問題として、いつの時点が高値なのかは、将来になってみないとわからないのです。
結局のところ、将来株価が下がったのを見て、「ああ、あの辺りは高値だったのだ」と確認することしかできないのです。いつ高値か分かるのなら、誰でも儲けることができてしまいますからね。
ヤフコメに書いている人の「高値だ」「安値だ」という判断は、妄言のたぐいだと思っておいたほうがいいでしょう。わかったような事を書いている人も、じつはよく分かっていないのです。
当たるとしたらたまたまです。
投資と投機を混同している
このコメントのもう一つのポイントが、このコメントをした人は投資と投機の区別がついていないという点でしょう。「機関投資家の空売り餌食になる」とか、「機関投資家の実弾」といった表現をみると混同しているのがよくわかります。
■ 買って放置していても儲かるのが投資
投資というのは、基本的には、資産を買って保有することです。そうすると資産が勝手に増えて、あなたが金持ちになれるという仕組みですね。
資産が勝手に価値を増やすというのは、ちょっと分かりづらいかもしれません。いくつか例を挙げてみましょう。
例えば株式投資というのは、会社の一部を買うことです。会社が成長すると、株式という資産の価値も増えます。
あるいは、REIT というのは、投資法人を通して不動産を買うことです。投資法人が物件を貸して収益を得ますから、それが最終的に投資家に還元されます。
このように、最初に買うだけ以降は放置していても価値を増やすのが投資です。
■ タイミングを掴んで売買するのが投機
一方の投機というのは、タイミングで売買する事をいいます。
安いときに買って高いときに売るのは投機です。あるいは、空売りと言って、高いときに売っておいて安いときに買い戻すという投機の手法もあります。
そしてコメントした人は、投機という話になると、資金量が多い機関投資家が有利だといいたいようですね。
この主張が正しいかどうかは別にして、何をいいたいのかはわかります。でも、そもそも、投資と投機を混同しているのです。
■ 今回のもともとの記事は投資の話
そして今回のもともとの記事は、投資の話でした。毎月給与から一定額の投資信託などを買うわけですから、投機というよりは投資ですね。
ですから、投機の話をしても、全く噛み合わないわけですね。
でも、この手の誤解をしている人は、かなり多いようです。今回紹介したコメント欄を見ている限りでも、類似の誤解をしている人が多数いました。
- 月17万の手取りから株・投信に6万。「ふつうの暮らし」が貯金じゃ無理…
2019/5/5(日) 11:02配信 BUSINESS INSIDER JAPAN [↩]
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