一般に、品揃えが多いのは良いことだとされています。でも、実は、必ずしもそうではないようです。
なぜかというと、品揃えが多すぎると顧客が選べないで、結局何も買わないで帰ることも多いからです。つまり、顧客を店に呼ぶには品揃えが多いのはメリットですが、それが仇になって買わない事があるわけですね。
もしかしたら、投資信託というのは、そういう状況なのかもしれません。膨大な数の投資信託から選べないために、なかなか始められない人もいそうです。
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商品数が多すぎると、人は選べなくなる
例えば、あなたは焼酎の品揃えが自慢の居酒屋にいたとします。メニューには、100種類近い焼酎のリストが並んでいました。
麦や芋などの定番に加え蕎麦、緑茶、落花生などの変わり種の焼酎も有ります。美味しい焼酎や珍しい焼酎があり、あなたはかなり嬉しく感じるでしょう。
でも、その一方で、どれを選んで良いか困ってしまうはずです。飲んで見たいと思う焼酎がいくつもあり、簡単に一つに絞ることはできないのです。
結局、最初の注文をするまでに、かなりの時間を要することになるかもしれません。あるいは、ウェイターやウェイトレスにオススメを聞き、それを選ぶかもしれませんね。
何にしても、選択肢が多すぎると、一つに絞るのは相当大変です。
これに近いような経験は、誰しもしたことがあるでしょう。興味があるものが多すぎて、一つに絞れないという状態です。
もっと難しい場面もありそうですね
今回は居酒屋の例え話ですから、最終的には何杯か飲むことになるはずです。ですから、難しいとは言え、何らかの結論は出せるでしょう。
結局、一つに決める必要はありませんからね。いくつかの候補にまで絞れれば、それで大丈夫だからです。
でも、これが1つに絞らないといけないのだとしたらどうでしょう。相当悩むのではないでしょうか。
飲食店の場合は、時間的な制約があるので選びやすいという側面もあるでしょう。これが、何時間でも悩めるものとか、今日決める必要がないものとなると、逆に悩む時間はさらに長くなるはずです。
その日のうちに決められずに帰ってくるなんていうこともありそうですね。まあ、これが買い物の楽しみとも言えるのですけど。
【後悔回避バイアス】選択肢が増えると選べなくなる
このように、選択肢が多くなると、人は決断できなくなります。なぜなら、ベストの選択でないと後で気づいたときに、後悔するからです。
この後悔を避けるために、何も選べなくなってしまうわけですね。
また、選択肢が増えると、選択の合理的な理由が見つかりづらくなります。
2つしか選択肢がなければ、話は簡単です。もう一つの商品との比較をして、優れたポイントが多い商品を選ぶだけですからね。
でも、選択肢が多くなると、理由付けはそんなに簡単ではありません。色はこの商品、形はあの商品、機能で見るとまた別の商品となってくるわけです。
これも、選べなくなる理由の一つです。
例えば、全く機能が同じカバンで、色が赤と黒の2種類しかないとしましょう。これなら、自分の好みで選べば良いわけですよね。
しかし、別のメーカーで、同じ程度の価格帯のカバンが売られていたとします。機能もだいたい同程度ですが、細かい仕様に差があるとしましょう。しかも、色は、別売メーカーの方が種類が多かったとします。
こうなると、途端に選択が難しくなりますよね。たった2つのメーカーになるだけでも、かなり難しくなるわけです。
しかも、実際には、さらに多くのメーカーが存在します。その上、価格帯も様々ですよね。
こういう経験は、誰しもしたことがあるでしょう。カバンに限らず、色々なもので迷いますよね。家電やら、衣服やら、家屋やらで。
結局、迷った挙げ句、「今回はやめておこう」なんていうことになってしまうわけです。
やたらと品揃えが豊富な事をアピールするのは客を迷わせるだけ?
一般的には、品揃えが多いのはメリットとされていますよね。テレビが3種類しか置いていない家電量販店は失格でしょうし、日本酒や焼酎の種類が多い事を売りにしている居酒屋もあります。
その意味では、種類が多いのは良いことなんですよね。アピールになります。
でも、イザ商品を選ぶ段階になると、お客さんは困ってしまうわけです。数が多すぎて選べないとなります。
居酒屋だったら、適当に注文すればいいでしょう。お店のオススメを選んでもいいですし、一緒に行った人と同じものを飲んでも構いません。
でも、テレビのような家電製品だと、ちょっと困ってしまいますよね。結局、何も選ばず帰るということに成りがちです。
ですから売り手としては、品揃えに関しては、かなりの工夫は必要なのです。
とりあえず、扱う商品数は多くした方が良いでしょう。1つのメニューだけでやっているお店もありますが、かなりの少数派でしょうから。
ただ、お客に迷わせては売上が落ちるので、お客の選択肢は数種類程度に絞る必要が有ります。一部のおすすめ商品などを目立つようにしておいて、その中から選ぶように、暗に促すという感じになるのでしょうか。
このあたりの工夫ができるかどうかで、売上にはかなりの差がありそうです。
投資信託もこんな状況かも
実は、金融商品でもこんな状況は多いのかもしれません。資産運用を始められない理由が、金融商品の数が多すぎるからというわけです。
実際、日本国内には、投資信託だけでも数千本が売られています。その中から自分に合う投資信託を数本を選べと言われても、困ってしまいますよね。
実は、投資信託に関してある程度勉強している人なら、意外と簡単に候補を絞り込んでいくことができます。最終的に絞るのはむずかいくても、ある程度のところまでは数分から数十分程度で絞り込めるでしょう。
ネット証券のサイトだと、フィルタリングという、条件に合致する投資信託だけを抜き出す機能もあります。こういうものを使えば、話はとても簡単です。
種類が多すぎて諦めた人もいるでしょう
でも、投資信託を買うのは、そんなふうに勉強している人ばかりではありません。投資信託でも買ってみようかと思って、いざ調べてみると、あまりの種類の多さに愕然とすることになるでしょう。
その結果、投資信託を買うことを諦めてしまう人もいるはずです。後悔回避バイアスが働くわけですね。
具体的な統計があるわけではないので、実際にこういうケースがどの程度あるのかはわかりません。でも、それなりにいそうな気がします。
少なくとも、十分な知識もないのに投資信託を選べと全投資信託のリストを渡されたら、途方にくれてしまうはずです。選べずに投げ出すことだって、十分にありそうです。
勧められた投信や売れている投信を買う
そこで、銀行や証券会社が勧める投資信託を買ってみるなんていうことになります。あるいは、銀行や証券会社のサイトの売れ筋投資信託を選んだりするわけです。
でも、この手の投資信託って、だいたい手数料が高い投資信託なんですよね。というのも、銀行や証券会社の窓口で勧めるのは、手数料が高い投資信託に限られるからです。
手数料の高い投資信託でないと、金融機関が十分に儲からないのです。時間を掛けて売るだけ損というケースだってあるでしょう。
極端な例だと、手数料が安い優れた投資信託は、オンライントレード限定などというケースすらあります。ここまでやると、悪質だと思いますけどね。でも、本当にこういう例は有ります。
そして、銀行やら証券会社の窓口で積極的に勧められる投資信託が、結果的に各金融機関の売れ筋投資信託となるはずです。金融機関に積極的に勧めるから、その金融機関の中では、当然よく売れるのです。
ということは、売れ筋投資信託の多くも、やっぱり、手数料が高い投資信託となるわけです。
ネット証券と店舗型の金融機関で売れ筋の投資信託は全く違う
こうした事実は、ネット証券の売れ筋ランキングと店舗型の金融機関のランキンを比べてみるとよくわかります。
ネット証券の売れ筋投資信託は、かなり手数料が安いものが多いのです。店舗型の金融機関のような営業が無いからでしょうね。
あるいは、自分で勉強している人が多いでしょうから、適切な投資信託を選ぶ方法を知っている人が多いのでしょう。
というか、そもそも、店舗型の金融機関の売れ筋が変なんですけどね。いいかげん、個人の投資家も、良くない投資信託をかわされていることに気づかないといけません。はっきり言って、いい鴨です。
種類が多すぎて選べないことで結果的に不利益に
最後に整理してみましょう。
このように、種類が多すぎて選べないことで、投資信託を買えないことが有ります。後悔回避バイアスが働くわけですね。
また、結果的に不利な投資信託を買うように、金融機関に誘導されているという可能性もあります。もっとも、投資信託の種類が多いのは、単なる投信会社の企業努力の結果でしょうけどね。
販売会社である銀行や証券会社が、投資信託の本数が多すぎるという状況を、上手に利用しているという感じでしょうか。選べない人に専門家としてアドバイスをすることで、自分の売りたい商品へ誘導する状況を作っているわけです。
そして、一般の顧客と金融機関では、情報量の格差は計り知れません。金融機関が熱心に勧めてくる投資信託があったら、それが良いもののように信じてしまう人も少なくはないでしょう。
自分である程度絞り込めるようになる事が必要
こうした自体を避けるには、自分である程度絞り込めるようになる事が必要です。自分で絞り込めるようになっておけば、仮に誰かに相談しても、変な投資信託を勧められることも無いでしょう。
こうなれば、投資信託の種類が多いことは、むしろメリットとなります。状況を自分に有利にするためにも、多少の努力は必要とういことでしょうね。
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