多くの個人投資家は投資信託の手数料を把握していません。裏付けがないので個人的な感覚ですけどね。
何でそんなふうに思っているかというと、手数料を把握していたら、売れ筋の投資信託が違うはずだからです。手数料から見たら、先ず除外するであろうような投資信託が売れているのです。
投資信託の手数料は、交付目論見書やパンフレットに明示されています。でも、それをみても、手数料の高さに気づきづらい人が多いようです。(それすら見ない人も多いのですが)
どういうことなのでしょうか。行動経済学の観点から、考えてみましょう。
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同じ事を言っていても受ける感じが違う
突然ですが、質問です。次のような文言を見たときに、あなたはどちらが有利に感じますか。
A:投資信託を買い付ける時に、3.24%(税込み)の買付手数料がかかる
B:100万円の買付けに付き、3万2400円(税込み)の買付手数料がかかる
質問を見た瞬間には、Bの方が手数料が高いように感じた人が多いのでは無いでしょうか。
3万円を超える金額というのは、日常生活の中では、比較的大きな出費ですからね。手数料でそれだけかかるとなると、かなり大きな手数料という気になってきます。
3万というと、スーツが買えるような値段ですし、数日程度の旅行ならできますからね。結構大きな出費です。
一方の3.24%という比率は、消費税の税率と比べてもかなり小さなものです。なんとなく、この程度なら仕方がないと思ってしまう人が多いのではないでしょうか。
同じ内容でも違った印象を受ける
もちろん、この2つは同じ事が書いてあります。100万円の3.24%は、3万2400円ですからね。
でも、受ける印象は全く違うのです。上に書いたようにBの方が手数料が高い印象を受けます。
今回のケースでは、両方が書いてあるので、結局同じものだとすぐに分かります。では、もしAだけだったらどうでしょうか。なんとなく安いという印象を持つだけの人が多いのでは無いでしょうか。
ということは、売る側が手数料を提示するときには、Aのような見せ方をしたほうが有利なわけです。手数料が安いという印象を与えられますからね。
ですから、このような表現の工夫は、商売の世界ではよく活用されています。
フレーミング効果
ちなみに、表現の仕方によって与える印象が違うことを、フレーミング効果といいます。ブランド用語集には、次のように定義されていました。
フレーミング効果とは、問題や質問の提示のされ方によって意思決定が異なることをいう。(ブランド用語集【トライベック・ブランド戦略研究所】)
フレーミング効果に関して、もう一つ実例を挙げておきましょう。次の2つの質問を比べて見てください。
A:手術を受けると99%の確率で3年後も生きている
B:手術を受けても1%の確率で3年以内に死ぬ
言っていることは同じなのに、受ける印象が全く違うはずです。
Aの言い方は、かなりポジティブな印象を受けるでしょう。その一方で、Bの言い方だと、死の可能性があることを意識してしまいます。
あるいは、次の2つもくらべてみましょう。
A:ある投資信託を買うと、2%の確率で1年で25%以上の損をすることがある。
B:ある投資信託を買うと、98%の確率で1年で25%以上損をすることはない。
これも言っていることは同じです。でも、受ける印象はぜんぜん違うでしょう。Aの方がリスクが大きいと感じるはずです。
もっとシンプルな例もあります。
A:このくじで当選すると、500円ももらえます。
B:このくじで当選しても、500円しかもらえません。
明らかに、Aの方が有利な感じがしますね。ちょっとした言葉遣い一つで、与える印象はだいぶ違うのです。
パーセンテージと金額は常に変換する習慣を
ちなみにこのフレーミング効果は、マーケティングでよく使われます。ということは、金融の営業などでもよく使われるということです。
手数料を示すときには、手数料が小さい印象を与えるために、パーセントで表現したりします。その一方で、受け取る金額の場合は、「〇〇円も」などと書いて大きい印象を与えたりするわけです。
2,000円のキャッシュバックは何パーセント?
例えば、キャッシュバックキャンペーンなのでは、金額で表現される事が多いようです。「対象となる投資信託を100万円購入すると、2,000円キャッシュバック」というような感じですね。
2,000円というと、それなりにまとまった金額のようなきもします。ちょっと贅沢なランチが食べられるくらいの金額が戻ってくる感じですかね。
でも、割合で考えると、購入金額の0.2%にすぎません。「購入代金の0.2%キャッシュバック」などとあっても、誰も興味は持ちませんよね。
それに、これらの投資信託では、2%とか3%程度の買付手数料を取られる場合がほとんどです。3万円の手数料を取るから、2,000円返してあげるというだけの話なのです。
ということは、手数料が少し安くなるだけで、それほど有利なものではないのです。もともと手数料がかからない金融商品を選んだほうが、よほどマシと考えるべきでしょう。
パーセント表示は具体的な金額を計算する
このような形で、あなたも印象操作をされている可能性があります。十分に注意しましょうね。
とりあえず、できることとしては、パーセンテージ表示されているものは具体的な金額を計算してみましょう。あるいは、金額表示のものはパーセンテージを計算するのです。
これをするだけで、この手のごまかしには対応できます。
手数料の高さを知れば購入する投資信託が違うはず
個人投資家に、手数料を具体的な金額で計算しなおす習慣があれば、世の中で売れている投資信託はガラッと変わるはずです。というのも、銀行や店舗型の証券会社で売れ筋の投資信託として紹介されているものの多くは、かなり手数料が高いからです。
例えば、2019年2月の、みずほ銀行の投資信託買付けランキング1位は「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」でした。この投資信託の手数料は、以下のとおりです。
購入時手数料:3.24%(1億円未満)
信託報酬:年率1.788%程度(税込)
この投資信託を100万円買ったとすると、購入時手数料は3万2400円かかります。信託報酬は基準価額の変動で変わるのでなんとも言えませんが、基準価額が変動しなければ1万7880円かかる計算です。
ということは、これを買って1年持つだけで、初年度は約5万円の手数料がかかるのです。冷静な判断力があれば、100万円に対して5万円の手数料は高すぎると気づきますよね。
勧められるがままに買ったのでしょう
おそらく、この投資信託を買った人は、みずほ銀行の営業に勧められるがままに買ったのでしょう。計算する一手間を惜しんだばかりに、不利な商品を買わされたわけです。
もしかしたら、投資信託の手数料体系を知らないだけなのかもしれませんけどね。まあ、どちらにしても、金融機関にとってはいい鴨です。
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