貯蓄型の生命保険(養老保険や個人年金保険)は、時代の変化に対応しづらい金融商品です。なぜかというと、元本割れをするので、解約をためらう人が多いのです。
このことは、行動経済学で言う「サンクコスト効果」で説明ができそうです。既に払った保険料がもったいなくなってしまうのですね。
Contents
生命保険でもサンクコスト効果が発生する
前のページでみたように、投資信託の買付手数料は投資判断に影響を与えることがあります。これは、サンクコスト効果の一つと考えていいでしょう。
サンクコスト効果というのは、回収不能な費用により判断が影響される事を言います。投資信託の買付手数料という費用に、投資判断が影響されたわけですね。
このサンクコスト効果は、貯蓄型の生命保険でも見られそうです。既に払った保険料がサンクコストに成り、解約できなくなるケースが有るのです。
どういうことなのか、見てみましょう。
貯蓄型の生命保険でもサンクコストは発生する
繰り返しますが、貯蓄型の生命保険でも、サンクコスト効果は大きく影響します。貯蓄型の生命保険というのは、養老保険や学資保険、個人年金保険などです。
これに終身保険を含めてもいいでしょう。毎月保険料を納めると、将来まとまった金額のお金が返ってくる保険だと考えてください。
貯蓄型の保険においては、これまでに支払った保険料が、サンクコストに該当します。今までに支払った保険料を何とか取り返そうとするために、判断を間違うことがあるのです。
固定金利型の金融商品は変化に対応しづらい
貯蓄型の保険として挙げた保険は、基本的には固定金利の保険です。固定金利というのはどういう意味かというと、契約時点で決めた金利(予定利率)でずっと運用されるということですね。
この固定金利の金融商品は、市場の金利が上昇する局面では不利に働きます。というのも、市場の金利が上昇しても、保険で運用する金利は契約時点の金利のままだからです。
例えば、生命保険の予定利率(運用している部分の約束利回り)が1%のときに、10年物の利付国債の金利が年3%にまで上がったとします。こんな場合でも、貯蓄型の生命保険の予定利率は変わらないのです。
つまり、保険の運用金利は固定なので、契約を続ける限り、不利な状態のまま契約を続けないといけません。
解約すべきなのに解約できない
ということは、本来であれば、市場の金利が上がった時点で、これらの保険は解約すべきなのです。そして、金利の高い違う金融商品に乗り換えるべきです。
しかし、現実にはそれは難しいことが多いです。なぜかというと、契約から解約までの期間が短い場合、大きく元本割れをする可能性が大きいのです。
貯蓄型の生命保険を解約すると、解約返戻金というお金が戻ってきます。この解約返戻金の額が、既に払った保険料よりもかなり減ってしまうのです。
貯蓄目的の保険でお金が減ったら、ちょっと解約しづらいですよね。
長期的に見ると、この保険の解約で損をしても、別の金融商品に乗り換えたほうが確実に有利なことも珍しくありません。でも、この失敗を受け入れられず、解約できない人が多いのです。
分かっていても、不利な状況を続けてしまうわけです。これはサンクコスト効果と言っていいでしょう。これまで払った保険料が、サンクコストになっているわけです。
契約してからしばらくの保険料は積立てられない
さて、途中で貯蓄型の保険を解約すると、何故大きく元本割れをするのでしょうか。
実はこれらの貯蓄型の保険の保険料は、契約してからしばらくの間は、純粋な死亡保険の保険料に充てられます。被保険者がなくなった時の死亡保険料として使われてしまうので、貯蓄にまでお金がまわらないと考えれば分かりやすいでしょう。
その証拠に、貯蓄型の生命保険を開始から1年とか2年で解約しても、1円も戻ってこないケースがほとんどでしょう。お金が貯まっていないから、解約したときに返すものがないわけですね。
まあ、このあたりは契約によって違うので、断言はできませんけど。おおよそそういう仕組になっています。
ですから、契約から解約までの期間が短いと、確実に元本割れを起こすようになっているのです。つまり、最初のうちに支払う保険料は、貯蓄という面から見ると、コストと考えられるのです。
保険料をコストというのは、ちょっと違和感を持つ人もいるかも知れません。でも、死亡保険としての保険料は、貯蓄商品として見れば、コストですよね。ですから、まさにサンクコストと言えるのでは無いでしょうか。
どのくらいの期間が経つと元本割れしないかは、契約する時期の予定利率などによって異なります。これを書いている時点(2019年3月)だと、10年程度なら確実に元本割れする状況でしょう。
何にしても、このように元本割れを起こすために、解約するという決断ができなくなってしまうわけですね。解約して違う金融商品に乗り換えたほうが有利でも、最初に払った保険料がサンクコストになるので、適切な行動が採れないわけです。
貯蓄型の保険も商品も選んではいけない金融商品
もっとも、そもそも貯蓄型の生命保険なんていう、不利な商品を選ぶなっていう話はあるんですけどね。特に、金利が低い時期には、絶対に避けておくべき金融商品です。
手数料が高く、金利が固定されるというリスクが有り、中途解約すると元本割れするのです。はっきり言って、最も選んではいけない金融商品の一つとすら言えるでしょう。
サンクコストの存在はしっかり認識しておこう
とりあえず、回収できない費用を重視して判断を間違うというバイアスがあることは、ぜひ知っておくべきでしょう。サンクコストというものがあることを知っていれば、自分の判断の間違いに気づける可能性が大きくなるからです。
もちろん、こういうバイアスの存在をよく知った人でも、判断を間違う可能性はあるんですけどね。実際、大企業や国のプロジェクトでも、サンクコストに影響されて正しい判断ができないケースは珍しくありません。
ただ、知っていれば、回避できる可能性が大きくなります。それだけでも、十分に価値があることと言えるでしょう。
スポンサードリンク
まずは確定拠出年金(個人型)を検討しよう
個人の資産運用で一番有利な金融商品は、何と言っても確定拠出年金(個人型)でしょう。いわゆるiDeCo のことです。
普通に働いている人なら、年間数万円から数十万円の節税が可能です。もちろん、完全に合法です。こんなに有利な金融商品は、他には存在しません。加入がまだの人は、とりあえず検討だけでもしてみてはいかがでしょうか。
iDeCo をはじめるには、窓口となる金融機関を選ばないといけません。お勧めはSBI証券かマネックス証券です。とりあえずは、資料請求だけでも。

スポンサードリンク





関連した記事を読む
- 投資信託の買付手数料が影響して売買の判断が狂う?| サンクコスト効果から考えて見よう
- 貯蓄型の生保保険は最悪かも│ 国債が暴落したら現実的に何が困るのだろうか?
- ソニー生命の変額保険をチャックしてみました| 保険としても投資としても微妙だな
- 払済保険や延長保険を使えば保険料を払えなくなっても大丈夫!| 本当に大丈夫か?
- 養老保険「新フリープラン」を積極販売?| かんぽ生命は何を考えている